ザ★カインズの旅行手記 (3)

2002.8.26

和賀英樹

 

   〜前回のあらすじ〜

   たしか旅行をした時は、残暑で汗が顔から溢れ出す想いだったが、今はもう

   秋の長雨も終わり紅葉の季節。何やら違う汗が背筋に通る。やばい!記憶が

〜!記憶が〜!ナンチャッテ!エーット、あー確か財布がなくなったんだ。

後は皆さんの記憶力にお任せします。(ってどんな前回のあらすじやねん!)

    気を取りなおして本章へ。

 

 鉄板から立ち上る白い湯気が空の雲と同化していくのを、しばらく見ていた。5秒位。ただその短時間で、ゆらめく湯気とは違いパチパチパチっと頭は回転する。パチンコのデジタルもこの位回転して貰いたいものである。等価交換無制限の店なんか千円で15回位しか回らないし、出玉1900発じゃ確変を引かないと勝てやしない。あー羽モノが打ちたい・・・。

 話がそれて来たので止めておく。旅行とまったく関係が無いじゃないか!そうだ財布を捜していたんだ。そういえば車から降りるとき、財布がポロリと落ちたのを思い出すが、その後の処理を忘れてしまった。処理というか拾うのを忘れていた。う〜ん?最近、80歳を越える祖母に「お前もボケたね〜」などと言われる私は、ちょっとヤバイんじゃないかな。今からこんな事では、老後は注意が必要だ。

 そうだ!駐車場に落ちているかもしれない。

「駐車場に行って来ます」

そういい残して一目散にテーブルから駆け出す。F1ドライバーのシューマッハーも驚く位の速さで駐車場に走っているつもりだが、100m19秒位がいいところだろう。全力で走って車の前に到着。なぜかフルマラソンを走りきった選手の様に、爽やかな笑みを浮かべていた。はたから見ていたらとても気持ちが悪い男に見えるだろうが、誰も居やしないから関係ない。でもビールを飲んですぐに走ったわりには、呼吸一つも乱れていない。それだけ財布に集中していたのだろう。さぁ財布はどこだ?あっ!在った。何て事は無い、運転席の上に転がっていた。車の前にきてすぐに見つけてしまった。良かった、良かったが、さっき皆の前で大騒ぎして飛び出して来たんだ。「あぁ在りましたよ」じゃあ芸が無さすぎる。何とか皆を笑わしてやろうと芸人魂に火がついた。色々と考えながらサザエさんハウス(マルクトプラッツ)でビールを購入し、テーブルへ向かうが、思いつかない。ゆっくり歩いたが考えが浮かばない。遠い距離で無いのであっという間にテーブルに着いてしまった。こうなったらアドリブしかない。

 「財布在ったの?」と、お題目の様な問いかけ。

 「もう飲んでます」と、私。

ウケはいまいちというか、おもいっきり流された。たしかに今こうして書いていても寒い気がする。傷心の思いで席に着くと対面の村山が「まだまだだな」という顔をしていた。

 

 鉄板の上から肉、野菜、ソーセージ、じゃがバターなどが次々と消えていく。私の目の前からはビールが消えていく。いや〜!ビールにバーベキューはたまりません!熱熱バーベキューに冷たいビールをキューッツ!こういう時はガツガツ食ってもしょうがない、ゆっくりビールを楽しみながらツマミ程度に食べることにした。どうせ買い足しもあるだろう。ビール3本目の時ふと周りを見ると、あれ?皆はまだ飲み物をおかわりしていない。それはいいとして、食材は鉄板の上にのっているだけで、皆の雰囲気はマッタリとしている。ご飯を食べていた二人も、茶碗が空になっている。やばい!皆は満足モードに入っているじゃないか。この時点で私の満足度をマラソンで例えるなら、食べ物=30km地点、ビール=20km地点位。たぶん他の人たちは、とっくに41kmを過ぎている事だろう。ウーン!気付かなかった。

 「食材の買い足し、どうします?」と、私。

 「もう十分でしょう」と、貴日さん。しかし私には皆が言っている様に思えた。

     終了・・・。

 

 保田でまた食事をするからと気持ちを切り替えて、バーベキューは終わり。移動のため駐車場に戻る。途中売店などがあったが時間が無いのでスルー。車の運転は貴日さん。矢ヶ崎君でも良かったが、初心者免許で飲酒運転。公道ではないので良いのだが、何より車が心配だ。本人も「どうなっても知りませんよ」と言っている。却下。

 次の目的地はパターゴルフ。これは私がこの旅程を考えていた時からやりたかった事だ。メンバー全員で一つのモノを競いたい。それが例えば旅先の窯元で茶碗を作ってみたり、手打ちそばが出来る所で誰が1番美味いかとか、どういう旅程になってもイベント的なモノを入れたかった。その方が思い出も残るし、手記のネタにもなる。まして時間もオシていたので、自由散策など出来る状態ではなかった。ただ皆がバーベキューの後、やる気(?)になっていたのが不幸中の幸いだ。

 ドイツ村のパターゴルフ場は、6コース108ホールと関東一のスケール。まるで人間の煩悩をカップインするようだ。だけど我々は時間が無いので1コースしか回れないが悔やまれる。

受付に行くと、学生アルバイト風でスレてなさそうな素朴な感じの可愛い受付嬢がいた。増して、ドイツ風の制服がそれのスパイスになっている。その子と私が料金など話をしている間、横にいた村山はすでにデレデレだ。村山はその子の事が大変お気に入りみたいで、この後ずーっと「可愛いかったな〜」と繰り返していた。ずーっと。本当に。

 「どのコースに致しますか?」と、受付嬢。

 「1番難しいコースで」と私、何故か即答してしまった。これが後でアダとなる。

 色々と説明を受け、最後に「3人3人の2グループでまわって下さい」と言われたが、それは他のパーティーへの気配りだろう。ガラガラなので却下する事にした。ボールとマーカーを受付嬢から手渡しで受け取る。やっぱり村山はデレデレだ。各々パターを選び、いざ!ここで1番難しいといわれるオレンジコースに挑む。

 ここでメンバーのゴルフ経験を公開しよう。

  貴日 ・・初体験

  常見 ・・初体験

  河野 ・・(パターでない)コース経験有

  和賀 ・・伊豆ぐらんぱるパターゴルフ杯優勝(自主興行)その他多数経験有

  村山 ・・伊豆ぐらんぱるパターゴルフ杯準優勝(自主興行)その他多数経験有

        ちなみに伊豆ぐらんぱるパターゴルフ杯参加人数は2人

  矢ヶ崎・・「みんなのゴルフ」のエキスパート(キャディーはスズキ)

 各自色々な経験を背に、難関のオレンジコース1番ホールのティーグランドに立つ。ただし、つむじ風は舞っていなかったが異様な空気が流れていた。私も多少色々なパターゴルフのコースをまわっているが、ここのコースには変な威圧を感じた。総コース数108コースの広い敷地もあるだろうが、ティーグランドで感じたアンジュレーションの妙は、今までに無かった本格的なモノだ。経験者の方ならお分かりだと思うが、良くあるパターゴルフは付け合せの様な狭い敷地に、何だコリャ?というくらい強引なレイアウトだったり、ナメてんのか!みたいな単調なコースが多い。でもここのコースはショートコースを縮小した様な、しっかりとしたつくりだ。ここまで完成されたコースは見たことが無い。もちろんこのオレンジコースしか見ていないので断定は出来ないが、パターゴルフ好きな方がいたら、ここはお勧めである。ぜひ108の煩悩をカップインさせよう。私も、もう一度来てみたいコースだ。

 が、今回は初心者を含むパーティーである。「1番難しいコースで」何て軽はずみに言った自分にすごい責任感を覚えた。果たして時間内(レンタカーの返却時間)に間に合うのだろうか?でもそんなに不安を考えてもしょうがない。スポーツなんて全然似つかわないカインズでも、もしかしたら凄いセンスを持った方々かも知れない。ルールを適当に決めて(後でルールブックを見たらその通りだったのがビックリ)始める事にした。

 「先に打つよ」と、常見さん。呆気なくオーナーが決まった。初心者といっていた常見さんは、多分クラブを持つこともあまり無いだろう。慎重に、何て思っていたら意外にも豪快な素振りをした。そんなに気張って素振りをしなくても、なんて思うが先か。

 「空振りした!」えっ空振りなの?風圧でボールは1mほど空しく転がっていく。1打。

次の貴日さんも初心者だ。今度は当たった。勢い良く転がるボールは草生い茂るラフに直行。OB寸前で止まる。

河野さんはゴルフ経験者なので期待が持てる。ホームそこそこに打ち出したボールは大きく反れで、隣のコースへナイスショット!OBです。

矢ヶ崎君は自分の頭の中でコースをグリット表示し、方向キーで打ち出す方向、ボタンでショットモードを決め、ボタンを押してスイング開始、パワーゲージを見ながらボタンを押してパワー決定。フェアウェイのいい位置につけた。(ナイスですよ!)

村山はパターゴルフ経験者。同じ経験者の河野さんと一緒にOB。しかも同じ場所だ。やはり仲が良いのだろう。

最後に私。シャイニングロードはすでに見えていたが、パターゴルフ経験者として皆の度肝を抜いてやろう。通常は危険が伴うのでやらないラフ越えだ。しかもこのコースはラフにバンクがついていて、失敗するとOBになってしまう。ままよとパタークラブを振りかぶってショット!ボールは全く違う方向にかっ飛んでいき、OB寸前のラフ。

次の打順はOBの2人、常見、貴日、私、矢ヶ崎の順番になった。各々パットを刻んでいく中、貴日さんがラフの中で空振りをしてしまった。

「貴日さん。今のは見てないですよー!もう一度どうぞ!」と、見ていないと言えない声がかかる。接待ゴルフチックな掛け声に、一同大爆笑だった。

 

 一打づつ書いていると、この手記がいつ終わるか分らないので省略するが、途中で後続のパーティーに追いつかれてアタフタしたり、ラフの中に得体の知れない生物と遭遇してゴルフそっちのけで常見さんは写真を撮ったり、ドタバタだったが皆楽しそうな顔をしていた。バーベキューの時といい、旅行係としてこの様な光景を見られる事が、幸甚の極みである。ボトルに入ったバーボンも着実に半分にないっていた。

 ただし至福の時も時間には叶わない。6ホール目の時にフッと時計に目をやると3時20分を指している。予定出発時間をとうに越えているではないか!頭の中では117のお姉さんの声が流れていく。「3時21分ちょうどをお知らせします。チッ、チッ、チッ、ポーン」この先どうなってしまうのだろうか。

 やはり6人で1パーティーは無謀だったのだろう。1ホール1ホール時間がかかり過ぎる。9ホール終了後2パーティーに分けることにした。貴日、常見、矢ヶ崎組と河野、村山、私の組だ。いざプレイするとあら不思議、OUTにかかった時間はINでは2分の1位で終わってしまった。私の手記なんか3行にも満たない。一同スポーツ後の爽快感に浸っていたが、村山は汗ダクだった。

 受付に戻ろうとすると、あの受付嬢がハウスの前で待っているではないか。各々手渡しでボール等をその子に渡していく。1人2人と最後の村山の時、その子の手がすでに一杯だった。

 「持ちましょうか?手伝いますよ」と村山。サービス精神的下心旺盛だ。しかも顔はデレデレだ。よほどこの子の事が気に入ったらしいが、それも思い出の1ページになってしまう空しさを、この時は気付かなかったのだろう。ただ青春というもどかしさを、緑の芝で踏みしめながら・・・。「村山聡の恋の19番ホール〜東京ドイツ村編〜」完。

 

 ここで皆さんも気になるスコアをお見せしましょう。

ザ★カインズパターゴルフツアー

 

 

 

 

賞金 「よかったね」の一言

 

 

 

 

HOLE

1

2

3

4

5

6

7

8

9

OUT

10

11

12

13

14

15

16

17

18

IN

TOTAL

PAR

4

4

5

4

3

4

5

4

3

36

4

4

4

3

4

3

5

4

5

36

72

常見

7

6

7

4

3

7

6

3

3

46

6

4

7

4

8

3

4

5

6

47

93

貴日

8

5

6

6

6

4

4

8

2

49

5

7

4

4

4

3

9

5

9

50

99

河野

11

4

4

4

2

6

5

4

3

43

5

3

4

4

4

3

2

5

4

34

77

矢ヶ崎

3

4

4

6

3

5

4

5

3

37

5

4

4

5

3

3

3

3

5

35

72

村山

9

4

5

3

3

5

7

3

4

43

3

5

4

4

6

2

3

6

5

38

81

和賀

7

5

6

3

3

3

6

4

3

40

6

5

4

3

2

2

4

5

6

37

77

 

 といった結果になりました。よかったね!矢ヶ崎君。この後矢ヶ崎君は「プロゴルファー楽太郎」と帰るまで言われていた。良いんだか悪いんだかどっちなんだか。しかし表を見ると分るが、もし河野さんが1番ホールでパーもしくはボギーだったら優勝は河野さんになっていた。惜しかったね河野さん!お金は出ないけど。

 

 一同スコアの結果に談笑をしていたが、そうだ我々には時間がない。予定では次の目的地に着いている時間だ。ここからそこまでは約1時間かかるのでこの時点で1時間オシという事だ。しかしここまで来ると意地でも目的地カットはしたくはないのだっだっだ。

 「さあ!行きますよ」と一言残し、まるで戦場に向かうかの様に、この場所から立ち去る。さぞかし皆も凛々しい顔立ちになっているのだろう。って、おいおい!皆さんもうグッタリかよ!矢ヶ崎君なんか歩きながらヨダレまで垂らしている。これじゃ戦場でなくて夢の中へ向かうみたいだ。これから強行軍なのに大丈夫か?私はいち早く車に乗り込みバタン!と勢い良くドアを閉めるが、続く音はパッタン、ポテと勢いがない。これから一体どうなってしまうのか!?

 次章は感動の最終回。とはいっても感動する話は無いけれど、何とか今年中には終わらせたいと思いますのでご声援宜しくお願いします。では!

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